自治医科大学 分子病態研究部 - 生体分子イメージング手法を組み入れた生活習慣病(肥満・糖尿病・血栓止血領域等)を対象とした基礎研究部門

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研究内容

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血栓の in vivo イメージング

我々は、新たな血栓形成モデルを作成しています。レーザー傷害によるROS産生と、in vivo イメージング技術を組み合わせてい、血栓形成過程を可視化しています。血小板機能に異常を来す各種遺伝子改変動物を用いて、いくつかの分子について、生体内での血小板血栓への関わりを明らかにしています。図2のように、ROS刺激により高い再現性を持ちながら、血管内に血栓を誘導することに成功しています。このように、単一血小板が同定できる解像度で、血栓が可視化されたのははじめてのことです。

我々のモデルでは楕円形を伴った血小板が血栓を形成しているのが特徴です。炎症性サイトカインのノックアウトマウス、キメラマウスの解析の結果、TNF-αをはじめとする炎症性サイトカインが、ROS刺激下でのvWF因子の血管内皮表面への表出に関わっていることが明らかになっています。さらに、IL-1、IL-6等の因子も血栓性を促進しており、これらの炎症性サイトカインは血管内皮に作用し、インテグリンシグナルと協同して、血栓の安定化に寄与していると考えられました。従来、炎症と血栓については多様な報告によりその関連が示唆されていましたが、本解析により血管内皮における炎症性サイトカインのシグナリングが血栓形成に関わっていることが示されました。

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CAG-eGFP
Dextran
Hoechst

図2 生体内における血栓形成過程の in vivo イメージング
レーザー照射により誘発された微小血栓の形成過程。
in vivo イメージングとレーザー傷害を組み合わせることにより、
腸間膜の毛細血管において、血栓を誘発し、血栓形成に寄与する単一血小板を可視化。
レーザー照射により血小板血栓が発達ししている。

近年の、多能性幹細胞(ES, iPS)の研究の進歩により、細胞療法を含む再生医学での広い範囲で、細胞療法の臨床応用が期待されています。しかし、これらの幹細胞を用いた基礎研究を臨床現場に繋げるためには、実際に試験管内で作成した細胞が、個体(マウス及び大動物)の中でどのように機能しているか、どのように病変に働くかを明らかにすることは重要になります。しかし、今まで幹細胞由来の分化誘導細胞の、体内での細胞動態を検討する手法は存在しませんでした。
我々は、京都大学iPS細胞研究所江藤教授チームとの共同研究により、ヒトiPS由来血小板の体内動態の可視化を行い、生体での機能を明らかにしています。in vivo イメージングにより、iPS由来血小板がマウス体内を循環しているだけでなく、レーザー傷害により誘発された血栓に人工血小板が寄与することを示しました。マウス血小板とiPS由来血小板が相互作用しながら血栓を形成するさまが観察されています。つまり、「人工血小板は血栓も作る」ことが、明確に in vivo イメージングにより証明されています。このように、本イメージ手法はiPS分化誘導細胞を用いた細胞療法の臨床応用に向けて、安全性・有用性を評価する上できわめて有用性が高い手法と言えます。

さらに、最近では、マイクロデバイスを用いて、採血により得られたヒト血小板の機能解析も行えます。たとえば、von willebrand因子やcollagenをコーティングしたガラススライド、もしくは培養した血管内皮細胞の上に、血小板を流し血小板凝集を促しました。ガラスコーティング面および内皮細胞との接着に伴い、カルシウム上昇がおきることを確認しています。生体血管を模したデバイスも開発されており、今後の展開が期待されています。

A

A

B

B

TAMRA
FLuo8-AM

C

C

HUVEC
TAMRA

図4 微小流路デバイスによるヒト血小板のカルシウム応答の可視化
von willebrand因子および血管内皮細胞(HUVEC)上に血小板を流している。
接着によりカルシウム上昇が血小板に認められる。
血小板は色素(TAMRA)、カルシウムはインディケーター(Fluo8-AM)で可視化した。